中国調達の不安を突き詰めていくと、最後はひとつの問いに行き着きます——「届いた箱を開けたとき、中身は図面どおりか」。この問いに対する実務の答えが、出荷前検品です。不良は、見つかるのが遅いほど高くつきます。日本の受入検査で見つかれば、返送や作り直しで納期は倍になり、送料と関税も重ねて払うことになる。中国を出る前に止められれば、工場との是正はその場で始められます。
受入検査と出荷前検品は、何が違うのか
どちらも「図面と現物の突き合わせ」ですが、決定的に違うのは場所と時点です。受入検査は日本に届いてから、出荷前検品は中国の工場を出る前。前者で不良が出ると、話は「国際物流のやり直し」になります。後者なら、不良はまだ工場の中の問題として処理できます。もうひとつの違いは交渉力です。出荷と入金を控えた工場との是正交渉は、モノが海を渡ってしまった後よりも、はるかに速く進みます。
検品では何を見るのか ── 基本の5項目
- 寸法 — 図面の公差どおりか。全寸法ではなく、機能に効く重要寸法と測定箇所を決めて測る
- 外観 — 傷・打痕・バリ・錆・めっきや塗装のムラ。「どこまでを許容するか」の基準を先に決めておくのがコツ
- 数量・梱包 — 数量の照合と、輸送に耐える荷姿かどうか。長尺物や精密品は、梱包不良そのものが不良品を生む
- 書類 — ミルシート(材料証明)や検査成績書が、約束した規格・書式で揃っているか
- 機能・はまり合い — 相手部品があるものは、実際に組んで確認できると確実
全数を見るか、抜き取りで見るかは、数量・単価・不良の影響度で決めます。少量の特注品なら全数、量産ロットなら抜取り基準(AQLなど)を事前に取り決めるのが一般的です。方式そのものより大事なのは、「どの方式で見るか」を発注前に合意しておくこと——ここが曖昧なまま出荷日を迎えると、検品は形だけになります。
「日本の図面に合っているか」は、翻訳の仕事でもある
検品の難しさは、測ることそのものより、基準のすれ違いにあります。公差の解釈、材料グレードの呼び方、検査成績書の書式——中国工場の考える「良品」と、日本の図面が意図する「良品」は、放っておくと少しずつずれていきます(このずれの正体は、当コラムの日中ビジネス文化の記事に詳しく書きました)。だからこそ出荷前検品は、日本側の要求を知っている人間が、中国の現場で見ることに意味があります。
FENTEXの検品体制
FENTEXでは、金属材料の博士号を持つ技術アドバイザーが、出荷前の検品を中国現地で行います。図面の公差・外観・数量を日本側の要求規格に照らして確認し、必要に応じて工場発行の検査成績書を添えて納品します。検品は最後の関門ですが、そこだけを見ているわけではありません。お見積もりの後、製造中も技術者が工程と日程を確認し、気になる点があれば出荷を待たずに工場と是正します。輸送の手配から、届いた後のご相談まで——窓口はFENTEXひとつです。
依頼側で決めておくと、検品が効く4つのこと
- 重要寸法と測定箇所の指定 — 「すべて図面どおり」ではなく、機能に効く寸法を名指しする
- 外観の合否基準 — 可能なら限度見本や写真で、「ここまでは可」を共有しておく
- 検査成績書の書式 — 欲しい項目と書式を先に渡す。届いてから書式が違っても、作り直しはききにくい
- 梱包・荷姿 — 防錆・緩衝・長尺物の支持方法まで指定しておくと、輸送起因の不良を入り口で防げる
検品は、工場を疑うための工程ではありません。図面と現物のあいだ、日本と中国のあいだにある解釈の余白を、出荷前に埋めきるための工程です。それができていれば、届いた箱は安心して開けられます——確認するのは中身ではなく、伝票だけで済むはずです。

