Column
調達ガイド公開日

中国調達の7大リスクと対策 ── 発注前チェックリスト付き

相手は本当に工場か。量産で品質は保てるか。前払いは怖くないか。図面は守れるか——中国調達の失敗は7つに分類でき、それぞれに定石の対策があります。発注前に確認すべき10項目のチェックリスト付き。

ノギス(白黒)。測定と検査は中国調達のリスク管理の要

「中国調達は安いがリスクが高い」——よく聞く言葉ですが、実務の目で見ると正確ではありません。リスクは「中国だから」漠然と高いのではなく、選定・品質・納期・お金・知財・意思疎通・事後対応という7つの構造から生まれます。構造が分かれば、対策は打てます。この記事では、7つのリスクを1つずつ、定石の対策とともに整理します。最後に、発注前に確認すべき10項目のチェックリストを付けました。

リスク① 相手が「工場」ではない ── 選定リスク

B2Bサイトで「工場(メーカー)」を名乗る会社の中に、実際には自社工場を持たない商社が混ざっていることは珍しくありません。商社経由が悪いわけではありませんが、「どこで作られるか分からない」まま発注すると、品質の責任も、トラブル時の交渉相手も曖昧になります。中国政府の品質抽査(2024年)が示す通り、不合格率は全国平均14.3%に対し大企業では2.5%——つまり工場間のばらつきが極端に大きく、どの工場に当たるかが結果の大半を決めます。

  • 対策: 営業許可証(営業執照)で登記内容を確認し、「製造」の実体があるかを見る
  • 対策: 実地訪問か、少なくとも工場内のビデオ通話で設備と現場を確認する
  • 対策: ISO 9001等の認証は証書番号まで確認する(登録機関のデータベースで照会できる)

リスク② 品質 ── 「最初の1個」と「量産の100個目」は別物

サンプルは完璧だったのに、量産品の材料や工程が少しずつ変わり、ある日不良が届く——英語圏の品質管理業界で「クオリティ・フェード(quality fade)」と呼ばれる現象です。悪意の場合もあれば、原材料の高騰でコストを吸収しようとした結果の場合もあります。防ぐ手立ては検査の設計です。図面に測定方法・測定箇所まで書き込み、材料証明書(ミルシート)の提出を発注条件にし、初回品の承認と出荷前検品(PSI)を仕組みとして組み込む。「信頼できる工場だから検査は省く」は、順序が逆です。検査を仕組みにするからこそ、信頼が積み上がります。

リスク③ 納期 ── カレンダーは2つ、物流は1本ではない

春節(旧正月)の実質的な影響は前後2〜4週間に及び、国慶節(10月初旬)も生産計画を分断します(詳しくは別稿「『没問題』は『問題ない』ではない」で解説しています)。加えて海上輸送は、港の混雑や運賃相場で所要日数が振れます。対策は単純で、逆算と余裕です。連休をまたぐ案件は6〜8週間のバッファを見込み、急ぎの少量品は航空便との併用を最初から見積もりに含めておく。納期遅延の多くは「工場が遅い」のではなく、「カレンダーを1本でしか見ていなかった」ことから起きます。

リスク④ お金 ── 前払いと為替

日中間の取引は、発注時30%・船積み後70%の前払い型送金(T/T)が一般的です。「検収後に月末締めで支払う」日本の商習慣とは、リスクの置き場所が根本から違います。初取引でいきなり大きな前払いをしない——これが第一の原則です。金額の小さい試作から始めて実績を作る、信用状(L/C)や前払輸入保険といった道具を使い分ける、見積もりには有効期限を設けて為替の前提レートを明記する。お金のリスクは、ゼロにはできませんが、段階設計でいくらでも小さくできます。

リスク⑤ 図面と知財 ── 送った図面は、渡したノウハウ

相見積もりのつもりで図面を10社にばら撒けば、製造ノウハウを10社に渡したことになります。中国取引の法務実務では、日本式の秘密保持契約(NDA)ではなく、中国法に準拠したNNN契約——秘密保持(Non-disclosure)・目的外使用の禁止(Non-use)・顧客への迂回接触の禁止(Non-circumvention)——を、中国語で、中国で執行可能な形で結ぶことが定石とされています。あわせて、見積もり段階では図面の一部だけを開示する、重要部品は工程を分けて複数工場に発注する、といった「開示の設計」も有効です。

リスク⑥ 「言った・言わない」 ── 意思疎通

公差の解釈、「没問題」の意味、契約観の違い——意思疎通のすれ違いは、それだけで1本の記事になる深さがあるため、別稿「『没問題』は『問題ない』ではない」に譲ります。ここでは要点を3つだけ。①暗黙の期待は図面と仕様書に書き込む、②「わかりました」は復唱と書面で確かめる、③決めたことはその場で書き出して双方確認する。言語の翻訳ではなく、期待と前提の翻訳が本体です。

リスク⑦ 「起きた後」に誰が動くか ── 最も見落とされるリスク

見積もり比較や検査項目の情報は世の中に豊富にあります。ところが、不良品や誤配送が実際に起きた後——時差と言語の壁の向こうにある工場と、誰が、どの言語で、どこまで交渉するのか——この「事後」の設計は、発注前にはほとんど話題になりません。多くの失敗談の本当の痛点は、不良そのものではなく、不良の後に交渉の主体がいなかったことです。発注前に必ず確認してください。「問題が起きたとき、あなたは誰と、何語で話すことになるのか」。その答えが曖昧な取引は、価格がいくら安くても高くつきます。

発注前チェックリスト ── 10項目

  • 相手は工場か商社か、営業許可証と実地(またはビデオ)で確認したか
  • ISO 9001等の認証を証書番号まで確認したか
  • 図面に公差の意図・測定方法・測定箇所まで書き込んだか
  • 材料証明書(ミルシート)の提出を発注条件にしたか
  • 初回品(サンプル)の承認プロセスを合意したか
  • 出荷前検品を誰が・どの基準で行うか決めたか
  • 納期が春節・国慶節をまたがないか、またぐ場合のバッファを見たか
  • 支払い条件・見積もり有効期限・為替の前提を書面にしたか
  • 図面を渡す前に、中国法準拠の秘密保持(NNN)を結んだか
  • トラブル発生時の窓口・言語・対応範囲を発注前に確認したか

7つのリスクに共通する対策は、突き詰めれば「書き込むこと」と「確かめること」、そして「事後の窓口を先に決めておくこと」です。FENTEXは、中国で7年・日本で14年を暮らした創業者が両言語で工場と直接やり取りし、出荷前の検品を標準として、万一のトラブルも解決までひと窓口で対応します。お見積もりは無料、1営業日以内に一次回答します。このチェックリストの項目を1つずつ検討する時間がない——そんなときこそ、まずはお気軽にご相談ください。

コラム一覧へ戻る

「この部品、いくらでできる?」から。

記事へのご質問も、具体的な案件のご相談も歓迎です。図面や現物写真があれば、無料でお見積もりします。